大久手計画工房
追悼 江村哲二

「ライバルはベートーヴェン、ブラームス、ドビュッシー…」。そう語っていた、20年来の友人、作曲家江村哲二が急逝した。すい臓がんが発見されて2カ月、47歳であった。
一昨年、建築仲間の会「建築のチカラカイ」で講演をしてもらった。日々、建築に取り組む仲間たちは、彼の見ている世界の射程の長さ、深さに大いに感化され、同時に勇気をもらった。
「この世にこれがある、というそのことだけで、身体が震え、涙が溢れんばかりに自分の心が動かされるということがある」。それを創作しようとする江村とその謎を解明しようとする茂木健一郎のコラボレート「語りとオーケストラのための《可能無限への頌詩》2007」が初めてかたちになったのが死の2週間前。江村ワールドがいっそう加速する矢先の出来事だった。
二児の父であり、よき夫であり、工学の研究者であり、人間科学部で教鞭をとる教育者でもあった江村は、その日常の全てをスコアー「楽譜」に昇華させ、当人の人生設計より40年も早く逝ってしまった。彼の地で、師Toru Takemitsuにさぞや叱られていることだと思う。
日々、彼のブログを読み返す私は、そろそろ彼の死を受け入れないといけない。
(2007年6月19日記)

建築ジャーナル 2007/07月号掲載



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