北京四大陸選手権観戦記

試合観戦記はまた後ほど

2月17日・最終日・帰国

いよいよ帰国の日である。
同じ新世紀飯店に宿泊している方と、隣の西苑飯店に宿泊している方と亜鈴の3人でタクシー相乗りで空港へ向かおうと前夜に約束していた。
朝5時に新世紀飯店ロビーに集合とした。

朝4時ごろから起きだして身支度や、最後の荷物の梱包を行い、結構早くにはロビーに降りた。
17日朝に出発する各国何人かの関係者がすでに集っていた。
同じ全日空や、他社の近い時間帯の便で帰国する選手や役員、また観戦客も大勢いるので、早めにチェックアウトすることにする。
そのうち選手たちも続々と集まり始め、別の出入り口から出て行った。日本スケ連関係者や、長野EXに出演するカナダ選手関係者はチャーターしたバスで空港へ向かうらしい。
オージーや一部の北米勢も別のバスに乗り込んでいた。
西苑飯店の方もカートをコロコロと引きながら現れたが、もう一人の方がなかなか降りてこない。
内線電話をフロントで借りてかけると、寝過ごしたとかで、ただいま身支度の最中とのこと。
他の観戦客は相乗りの人ごと集まっては、タクシーで続々と出て行く。
時折関係者が慌てたふうにロビーをうろうろと歩いていた。まだ誰か降りてきていないらしい。
5時30分。 寝ぼけまなこでエレベーターホールから慌てふためいて出てきたのはバトル君だった。
彼を探していたらしい関係者が彼を別の出入り口へと連れて行く。

ロビーには亜鈴と西苑飯店の方だけが残された。
フロントやドアボーイたちも不審な目で私たちを見るようになったころ、お寝坊さんもやっと降りてきた。
チェックアウトを済まし、やっとホテルを出たが、それまで客待ちしていたタクシーは最後の一台が出た後だった。
ドアボーイやフロントに「タクシー一台呼んで!至急!」と適当な英語で叫ぶ。
タクシーを呼んだからしばらく待つようにと言われたようなので、寒風吹きすさぶタクシー溜で待っていたが、なかなか来なかった。
このときほど時間が過ぎ去るのが早く感じたことはない。
何回か中に戻って「まだなの?タクシー来ない!飛行機に乗り遅れる!」とおろおろしていると、やっと黒塗りのタクシーが現れた。
その辺を走っているオレンジ色や黄色のちゃちな小型タクシーではない。
高級車ではないと思うが、普通乗用車タイプである。日本で言うと中型〜大型タクシーだろうか。
3人ともおそらく「高そうっ、ボラれそうっ、フツーのタクシーは来ないのっ?」と思ったに違いない。
しかし時間がないことに背に腹は変えられず、そのタクシーに乗り込んだ。
まあ、3人分の荷物がいっぱいあったから、小型よりは大型の方で良かったにこしたことはないのだが。

空港に行ってもらうように伝えるが、ドアボーイや最初の連絡のときから「首都国際空港に急いで行きたい日本人が3人いる」とでも伝えられていたのだろう。
彼は高速道路に乗ると、とんでもないスピードを出して他の車をぐんぐん追い抜いて行った。
とりあえず制限速度20キロオーバーは当たり前である。たしか「80」の数字の標識のところを100km/hrは当然のようにして走っていた。
高速道路のはずなのにかなりの低速で走っている車はもちろんのこと、空港を目指す他のタクシーやバスを何台も追い抜き、黒塗りタクシーは今までの遅れを取り戻すかのごとく、まっすぐな高速道路を気持ち良いほど疾走して行った。
時折携帯電話で会話しているのには辟易したが。高速への螺旋状急カーブ道でもかかってきたケータイに出ているのには、驚きを通り越して感動した。
「やだー、またこの人ケータイかかってるよ」
「あー運転中は危ないからケータイしないでよ」
「いま追い抜いたバスに外国人がいっぱい乗ってたようだけど…?」
「バックミラーに交通安全のお守りがあるー!!日本のお守りがぁっ!?」
「やだっ、この人、メーター倒してないよっ」
「ボラれてもいいか。何とか間に合いそうだし」

…などと、運転手は日本語を解さないと勝手に決め付けて好き勝手に喋っていた。

やがて北京首都国際空港(北京首都国際機場)に到着する。
重い荷物も運転手さんはニコニコと嫌な顔せずに降ろしてくれ、運賃は3人で100元だったような気がする。
北京到着時にk嬢と二人で乗った小型タクシーが、一人120元ほどだったのに比べると、明らかに安い。
これが正規運賃というものなのか?

午前6時ごろの空港は、各社の始発便に乗ろうとする搭乗客でごった返していた。
とりあえず空港使用料を払うために専用の売り場に並ぶが、そこも異常に混んでいた。
なんとなく並んだ列の二人ほど前には、まだ眠そうな顔の某国の選手が数名いた。
そこから税関に向けては、関係者の姿が点在している。
90元の空港使用料は現金で支払わなければならない。もちろん人民幣でである。
そのことと、自分の財布にお金がないことに気付いた眠そうな顔の選手は、慌てて現金引出機を探たが、彼が列に戻ってきたときに手にしていたのはドル紙幣だった。
順番は来ているし、また現金を人民幣で引き出し直して列に並び直すには、彼には時間があまりにもなさ過ぎた。
後ろに並んでいた日本人女性客に交渉し、ドル紙幣と人民幣を交換して、呆れ顔で待っていた係員に空港使用料を支払っていた。
その後、私たち3人も空港使用料を支払い、税関検査を受けた。 そこから先は、3人とも乗る便が違うので、とりあえず別れた。

亜鈴は全日空である。マイレージの都合や親近感、そして試合会場で見かけるスポンサー「ANA」に期待して全日空を選んだのだが、それで正解だったのかもしれない。しかし不正解だったのかもしれない。
スケ連関係者のほとんどはこの便に乗っていた。
とりあえずチェックインカウンターに行くと、前がバトル君だった。
あはは〜こんなところでワライカワセミさん(バトル君のこと)に会えるなんて(^^)と笑っていると、バトル君はGHによって別の列へ連れて行かれた。
亜鈴の前に並んでいるのは大輔君と長光コーチとなった!
どうやら荷物の重量か内容物(スケート靴)かが問題で時間がかかっているらしく、二人のチェックインはなかなか終わりそうになかった。
手持ち無沙汰な大輔君と目が合わないように亜鈴はそっぽを向く。いや、大輔君もこちらと目が合わないようにしていただろう。
タクシー相乗りのお二方はさっさとチェックインもすまされ、いまだチェックインできない亜鈴のところに合流してきた。
やがて大輔君と長光コーチのチェックインがすんで、特殊な荷物を預けに二人は地上係員に連れられて何処かへといってしまった。

亜鈴もチェックインが無事終了し、次の関門である出国審査へと向かう。
出国審査場も非常に混んでいた。
しかも荷物を預けて身軽になっているので、今までのところよりも一番人口密集度が高い。
とある日本人選手が、折れ曲がった列で隣になった外国の選手と英語で話していたり、とあるお寝坊さんが再びチームメイトとはぐれて独りぽつねんと日本人集団の中にいたり。
審査が近くなると、出国を待つ人たちは同じような紙切れを取り出し始めた。
他の人が手にしているあの紙切れは何なの?と呆けていると、近くにいた親切なスケ連関係者が出国カードを書いておかないとだめだと教えてくれ、慌てて一人が記入テーブルに取りにいく。
出国カードをあらかじめ書いておいておかなければならないのだが、3人とも、そしてお寝坊&はぐれ選手もそれを忘れていたのだった。
お寝坊&はぐれ選手は再びここでも慌てていたが、書き損じに備えるために余分に取ってきた出国カードをあげると喜んでお礼を言ってきた。
出国審査も何事もなく通過し、搭乗までの間は免税店をめぐって人民幣を使ったり、それでも残った人民幣を両替したりした。
西苑飯店の方は中国系エアラインなのでまず彼女と別れ、そしてもう一人の方はJALで、ANAと搭乗口が近かったので二人でその辺境の搭乗待合室へ向かった。
日系エアラインの搭乗待合室では、関係者の姿がやはり目に付いた。
雪&宏博もいるし、みんな長野へ連れて行かれるんだね〜!!

搭乗がそれぞれ始まるので、もう一人のJALの方と別れ、ANAに乗り込む。
飛行機中ほどの左側窓際の席だった。席に余裕があるらしく、亜鈴の隣席の他にも空席はかなり見られた。
前シートの背についているディスプレイのコントローラーをいじったり、雑誌を見ていると、チケット片手にやってきたのは大輔君と長光コーチ。
チェックインが二人の次だったためか、亜鈴の席は大輔君のすぐ後ろの席だった!
離陸後、大輔君もしばらくの間コントローラーをいじっていたが、シートベルトサインが消えるとリクライニングを倒して仮眠に入ったらしい。お疲れなのね〜(^^ゞ
途中の機内食配布のときにCAにリクライニングを戻すように言われて、戻してもなお眠っていたのが忍びなく、機内食を食べ終わると長光コーチに、大輔君のシートを倒してもかまわないと告げてしまった。
亜鈴はひたすらソリティアと上海をし続け、あまり眠くはならなかった。

関係者はチェックインの順やカウンターごとに分散して座っているらしく、視界内には大輔君と長光コーチのほかは、数列前の川口さんとマル君、右側窓列のしーちゃんと本田選手ぐらいしか分からなかった。
ソリティアにも飽きたころ、成田空港に到着。 結局大輔君はほとんどずっと眠っていたようだった。

成田の辺境へタクシー後、停止し、機外から出たところからはモノレールでターミナルに移動となる。
連絡モノレールを1便逃したが、乗った車両にはカナダ組がそろっていて、至近距離のダグ・リーに軽く会釈、バトル君は相変わらず眠そう、ジェニファーもややお疲れモードだった。
なんとなく熱っぽいような、だるい感じの体調不調はあったが、検疫カードに書くほどのことでもないので、特に申告はしなかった。入国審査、荷物のピックアップはすぐ済んだが、問題は税関で発生した。
スーツケースに巻きつけていたベルトが緩んでいたからなのか、それとも亜鈴が挙動不審で見るからに怪しかったのか(もちろんそんなことはないが/笑)、税関職員の質問を受けてしまった。
「中国へは初めて?観光?何しに行ってたの?スケート観に行ってきたの。向こうで荷物が取られて戻ってきたとかなかった?一週間の割には荷物多くない?何が入ってるの?ちょっと開けて見てもいい?」
1999年3月のヘルシンキ世界選手権に行くときにもトランジットのヒースローで開けられたことがあるので、またかよ〜とブツブツ言いつつ、また他の入国者の好奇の視線を感じながらスーツケースを開けた。
やっと詰め込んだ荷物なのに…でも袋やかばん類に一応整理して入れてあるので、それほど恥ずかしくはない。まあ、やましいものなんて入れてないし。
ベルトが緩んでいたのだって、亜鈴がもともと力不足なせいだし。
係員はカバーをはずしてその下を見たり、ケースの内側を叩いてみたりしていた。
応援幕を入れた袋にも気付いて「これは何ですか?」と聞くから「応援幕です。ほら、スケートの試合を観に行ってたから。何なら広げてもいいですよ」と開き直ってみる。
「それはセーター類、それはベンチコート。どれくらいの気温か分からなかったからちょっと多めに持って行っちゃって〜。あっ、それはお土産のお茶とかお菓子」
「…はい。本日はお忙しいところご協力ありがとうございました」
「いいえ〜、これもお仕事ですものね〜。あの、こちらのバッグは中見なくてよろしいのですか?」
と機内に手荷物として持ち込んでいた四大陸公式バッグを台に載せたが、それは良かったらしい。
スーツケースを元のようにしまい、やっと解放された。周囲には関係者の姿はもういなかった。
しかし冷凍倉庫のような重い扉を開けて到着ロビーに出ると、彼らはそこに集結していた。

亜鈴は出迎えに来ているはずの友人を探さなければならなかった。
税関で引っかかったので、きっと待たしているだろう。
公衆電話からケータイに電話したが、彼女は、成田ではなく羽田空港にいた。
行き先を確かめずにぼんやりと電車に乗ったら間違えて羽田空港に行ってしまったそうだ。
点呼を終えた関係者たちは京成ライナー乗り場へとエスカレーターを降りて行った。
一部の日本人選手とカナダ選手と中国選手は、17日夕方から長野で開かれる長野オリンピック5周年記念エキシビションに参加するのである。
今回も四大陸終了から直行の強行軍となったようだ。
お疲れ様。そしてベストの演技をしてきてね!と、エスカレーターで下りて行く大輔君たちの後姿にエールを送る。
そして亜鈴は、重い荷物を抱え、羽田行きリムジンバスに乗り込んだ。 やっぱりリムジンバスが気楽でいいわ♪

羽田空港までは持って行っただけで食べなかったお菓子などを食べて、あとは爆睡していた。
そして友人と会い、早速お土産を渡し、岡山行きのANAを待つこととする。
岡山空港に着き、岡山駅行きのバスに乗り込み、駅からはタクシーで帰宅。
とりあえずのお土産を持って、自転車で会社に着いたのが午後7時過ぎ。
興奮気味にテンション高く、まだお仕事中の同僚に、断片的に中国土産を話した。
元気だから手伝うよ、と申し出たが、とりあえず今日は帰ってゆっくり休んでということで、目もそんなふうに訴えていたので、亜鈴は帰ることにした。
この仕事場訪問が作業に悪影響を与えたのかもしれない。
翌日、亜鈴が不在にしていた数日間の受注データが消滅していることに気付いた。
留守中に作業手順を誤ってしまったらしい(>_<)

後ほど、大輔君と話す機会があったので、「北京から戻るとき、ずっと寝てたよね」と聞いてみた。
どうやら移動の飛行機ではたいてい寝ているらしい。
おまけに前夜にツァオ兄貴によって日本選手団は中華料理に連れ出されていたそうだし(^^ゞ
「北京ダックがすごくおいしかった。皮のところをもっと食べたかったけど、一番年下だから遠慮していた」
だそうです。
中華料理店を出るときにも一波乱あったそうで(^^ゞ

初めての個人観戦海外旅行、それもビザが必要な中国でしたが、行って良かったと思いました。
2月末からの中国は、ご存知のとおりSARSが流行して、渡航が制限されたりしていました。
ホテルなどの観光業が大打撃を受けたとも聞きます。
北京新世紀飯店のお土産売り場のお姉さんや、日本人スタッフなど、お元気にしていらっしゃるでしょうか。
また機会があれば行ってみたい、そのときこそは万里の長城などにも行ってみたい、そんな感想を持っている今日この頃です。
とりあえず中国には2003年9月1日より、15日以下の観光旅行などはビザ無しで入国できるようになったので、グランプリシリーズ北京大会は特にお勧めですよ!

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